米国は変わった、とうとう高官が共産主義中国を「寄生虫」呼ばわり

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民主党さえも中国の実態を暴き始めた

ホワイトハウス国家通商会議ディレクターのピーター・ナヴァロ氏は、米国のTV番組の中で、共産主義中国による知的財産権の侵害を激しく非難。その存在を寄生虫と呼んだ。

ナヴァロ氏〔photo〕gettyimages

ナヴァロ氏は全般的に媚中派と考えられてきた民主党に所属する。同氏は、経済学者・公共政策学者であり、ハーバード大学を卒業している。現在、カリフォルニア大学アーバイン校ポールミラージュ・ビジネススクール教授でもある。

2017年1月20日にトランプ次期大統領から指名を受け、新設された国家通商会議(=当時、現在は通商製造政策局)のトップに就任している。

 

2016年に、ナヴァロ氏はトランプ氏の大統領選キャンペーン政策アドバイザーに就任したのだが、彼が筋金入りの中国脅威論者であることが大きく影響したのではないかと思われる。

例えば、「中国経済と市場主導の米国経済のモデルは『地球と火星のように離れてる』」と述べ、人工知能やロボット工学などでも脅威になりつつある中国の知的財産権問題など不公正な貿易慣行への対処を主張している。また、軍用ドローンでも中国は市場を奪っているとして米国の輸出規制緩和を推し進めている。

トランプ政権の通商政策を担う重要部署に、民主党員、かつ破天荒なビジネスマンのトランプ氏とは相性の悪そうな学者が起用されているのは意外かもしれないが、まったく正反対なキャラクターだけに、人生経験豊富なトランプ氏にはかえって扱いやすいのかもしれない。

民主党共産主義中国離れ

ウクライナ疑惑は、共産主義中国に忖度(または指示があった?)した民主党のこれまでの主流派が大きく関わっている可能性が高いことは、10月15日の記事「『ウクライナ疑惑』で、トランプの大統領再選は確実になりそうだ」で述べた。

その民主党の投げたブーメランで、ジョー・バイデン前副大統領が政治的に極めて厳しい状況に追い込まれ、それまで泡沫候補扱いであったエリザベス・ウォーレン氏が民主党大統領候補のトップに躍り出るという事態となった。

ウォーレン氏も、テキサス大学法学部、ペンシルベニア大学法学部、ハーバード・ロー・スクールで教鞭をとったことがある、連邦倒産法を専門とする著名な学者である。さらに、訪問先の中国で、現地の記者団に対して「米国の対中政策は数十年にわたって方向性が間違っており、政策立案者が関係を現在修正している」と述ベている。

 

これまで、媚中派が主流であった民主党の中でも、共産主義中国を「寄生虫」と呼ぶかどうかはともかく、「いつかは民主主義国家になる」という甘い幻想は消え去りつつある。

特に香港騒乱が大きな影響を与えている。

「自由と民主主義」こそが、建国以来の「米国の核心的利益」であり、左右どちらの政治思想であってもこの「核心的利益」を犯すことはできない。

したがって、香港騒乱で「共産主義中国が人民を抑圧している」ことがあからさまになってしまったからには、民主党と言えども露骨な媚中行動はできない(10月16日の記事「現代版『ベルリンの壁』…香港の騒乱は『中国崩壊』の序曲か」参照)。

ベルリンの壁」ならぬ「香港の壁」の後ろに控える、「共産主義独裁国家」は共和党だけではなく、民主党からも「新・悪の帝国」と糾弾されつつある。

不公正取引で先進諸国に「寄生」した新・悪の帝国

現在、中国はWTOに加盟して自由貿易の恩恵を最大限に受けているのにもかかわらず、国営企業を優遇し、海外のSNSをシャットダウンして国内の言論だけではなく、社会活動や経済活動にも多大な制限を加えている。

また、知財を盗むコピペ経済でもある。さらには、中国大陸に進出する外資系企業に、厳しい規制を加えるだけではなく、その優越的地位を乱用して「最先端技術を渡せ」などという無理難題を吹っ掛ける。

たまりかねた米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。

それでも彼らが儲かっているうちはまだいいが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になる。

 

そもそも、中国のWTO加盟交渉は、極めて特殊であった。

実は、第2次世界大戦の戦勝国である民主主義中国(中華民国、台湾)が、WTOの前身であった関税貿易一般協定(GATT)の原締約国であった。しかし、1949年の共産主義中国の建国とともに中華民国が中国大陸から追放され台湾に移ったことから、1950年にGATTからの脱退を通告している。

共産主義中国は、「台湾の1950年の脱退は無効である」との立場をとり続けていたが、1986年、「GATT締約国としての地位の回復」を申請した。

その後、1989年の天安門事件の影響などにより、加盟交渉は難航し、結局GATTには参加できなかった。

やっと、2001年に、中東・カタールのドーハで開かれたWTOGATTの流れを継承)第4回閣僚会議において中国の加盟が認められることになったのだから、15年間も交渉したことになる。

この交渉では、「いつかは共産主義中国も民主主義国家になる」という甘い期待を持っていた米国の後押しも受けた。

だが、その後の中国共産党の後押しを受けた国営企業などによる不公正貿易の拡大や、知財だけでなく大量の軍事機密を盗み取る行為に米国民の堪忍袋の尾が切れたことを敏感に察知して、誕生したのがトランプ政権である。

米国の識者たちの多くは、共産主義中国に対して「恩をあだで返された」と感じているであろう。

したがって、貿易戦争・第2次冷戦など「共産主義中国にやさしくない」政策は、トランプ氏の政治信条というよりも「米国の民意」であり、トランプ氏は民意を先読みし、素早くかつ大胆に行動しているだけに過ぎない。したがって、ビジネスマンのトランプ大統領は、利害関係さえ一致すれば、共産主義中国とも「ディ―ル」を行うことができる。

ところが、冒頭で述べたナヴァロ氏や、ウォーレン氏の「反中国」は政治信条である。したがって、相手が全面降伏するまで徹底的に戦うはずだ。

もし、共産主義中国がウクライナ疑惑を仕掛けたとしたのならば、大失敗だ。妥協の余地のない、強烈な反中国派を台頭させたからである。

米国の世論は極端から極端に振れることがある

別に米国に限ったことではないのだが、世論はしばしば極端から極端に振れる。

独裁主義国家であれば、国民の世論がどうであろうと、力で押さえつけるであろうし、共産主義中国がその典型だ。

しかし、米国は民主主義国家であり、世論が政治・社会に与える影響は極めて大きい。

 

そこで思い出されるのが、第2次世界大戦をはさんだ、ナチス・ドイツへの米国の態度の変化である。

今でこそ、ユダヤ人が支配するハリウッドで反ナチ映画がうんざりするほど量産され、「米国にとってナチス・ドイツは『巨悪』とされている」が、少なくともナチス・ドイツポーランドに侵攻するまでは、米国でも親ナチス派が一般的で多くの実業家がナチスと取引をしていた。

大空の英雄として有名な、大西洋を初めて単独飛行したチャールズ・リンドバーグナチスを賛美していた。

さらには、IBMの実質創業者ワトソン氏(彼の名前がAI〈エキスパートシステム〉につけられている)も、IBMの製品がナチスに貢献したことなどから、叙勲された(後に返還している)。

別に彼らが特殊であったわけではない。英国も第2次世界大戦が始まる前には、ナチスに融和的なネヴィル・チェンバレンが首相を務めており、そのおかげもあってヒットラーが勢力を拡大した。

第2次世界大戦が終結し米軍が踏み込むまで、アウシュビッツの状況は、世界には知られていなかったので、米国でもナチスの支持者はそれなりにいた。

現在、日本企業ではESGが声高に叫ばれ、まったくと言っていいほど根拠がない「人類の排出する二酸化炭素による地球温暖化対策」に、信じられないほど巨額のムダ金が使われているのは、10月9日の記事「『地球温暖化騒動』の『不都合な真実』に目を向けよう」や、10月22日の記事「日本人が知らない『温暖化対策』巨額すぎる無駄なコスト」で述べたとおりである。

それに対して、香港、チベットウイグルなどで「人権侵害」を繰り返す中国共産党の息のかかった企業とは平気で取引をしている。

ESGの観点から言えば、「人権侵害国家」の企業と取引をしてそれらの国家を結果的にサポートすることは「極めて不適当な行為」であり、行うべきではない。

もし、何らかの形で、天井の無いアウシュビッツと呼ばれるウイグルチベットの惨状が赤裸々に暴かれた場合、共産主義中国と取引をしている日本企業は極めて難しい立場に立たされるはずだ。

ましてや、ウイグル強制収容所で日本のコンピュータやIT製品・技術などが使われていた場合、致命的な打撃を受けるであろう。

10月23日には、マイク・ペンス副大統領が「NBAやナイキが自社の利益を追求するために、中国政府の要求に屈服した」と激しく非難している。

特にNBAに対しては「中国共産党の側に付き、言論の自由を押しとどめ、中国政府直属の支局のように振る舞っている」とまで言っている。

今や中国に媚びているなどと思われたら、巨大なリスクなのだ。

米国の世論、さらには政府が明らかに変わりつつある。日本企業はその事実にもっと敏感になるべきである。